最近、投資に関する詐欺被害が増加しています。『簡単に儲かる』『リスクゼロ』といった甘い言葉に惑わされ、大切な資産を失ってしまう人が後を絶ちません。
投資詐欺の手口は巧妙化しており、専門知識のない人では見抜くのが難しいのが現状です。しかし、詐欺の特徴を理解し、適切な対処法を知ることで、被害を未然に防ぐことができます。本記事では、代表的な投資詐欺の手口や特徴を解説するとともに、詐欺被害に遭ってしまった場合の相談先についても紹介します。投資に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
投資詐欺の手口
投資詐欺は、巧妙な手口で被害者を騙し、大金を奪い取る悪質な犯罪です。近年、インターネットの普及により、投資詐欺の手口は多様化・複雑化しています。「簡単に儲かる」「リスクゼロ」といった甘い言葉に惑わされず、投資詐欺の手口を理解し、注意を払うことが重要です。ここでは、代表的な投資詐欺であるマルチ商法、ポンジスキーム、情報商材詐欺について、その特徴や被害事例を解説します。
マルチ商法
マルチ商法(マルチ取引)は、販売員が次々と新たな販売員を勧誘し、複数の階層で構成される販売組織を形成する商法です。販売員は、自分が抱える商品在庫の販売よりも、新たな販売員の勧誘に力を入れることが多いのが特徴です。マルチ商法自体は合法ですが、商品の販売よりも販売組織へ の勧誘に重点を置く「無限連鎖講」は違法とされています。
マルチ商法の報酬システムは、自分が販売した商品の利益だけでなく、自分が勧誘した販売員の売上に応じても報酬が得られる仕組みになっています。このシステムが、次々と新たな販売員を勧誘するインセンティブになっていますが、結局は上位の販売員のみが利益を得る構造となっています。
相談事例
- マッチングアプリで知り合った女性にセミナーへ連れていかれた。このセミナーを人に紹介するとお金がもらえるという。断り切れずにセミナーの契約をしてしまった。
- SNSで知り合った人とカフェで会い、ネットワークビジネスの説明を受けてスマートフォンで加入手続きや商品発注をしたが、クーリング・オフしたい。
- 出会い系アプリで知り合った人に誘われ、高額なビジネス教室の契約をしたが、後から「契約を取ってくればマージンが入る」と言われた。マルチ商法ではないか。解約したい。
- 「月額料金を支払うと安く旅行できる」と勧誘されて会員制クラブに加入した。後になって調べたところ、マルチ組織であることがわかったので、退会したい。
引用:国民生活センター
ポンジスキーム
ポンジスキームは、新たな投資家から集めた資金を、既存の投資家への配当に充てる詐欺的な投資スキームです。「ネズミ講」とも呼ばれ、必ず破綻する運命にあります。この仕組みを用いる犯人は、まず、高利回りを謳い、新規の投資家を勧誘します。集めた資金の一部を配当として既存の投資家に支払うことで、投資スキームが順調に運営されているように見せかけます。しかし、実際には事業からの利益はなく、新規投資家からの資金が枯渇すれば崩壊します。
非常に歴史の古い手法ですが、ブロックチェーン技術が登場し、SNSなどを入口とした仮想空間が出来上がると、ポンジスキームは再び登場するようになりました。資金の流れがあらかじめ公開されているものの、複雑であるため、被害者そのほかの投資家の誰もが「詐欺である」とは理解できない場合もあります。
よくある勧誘の言い回し
- 「今買っておけばあとで必ず儲かる」
- 「誰も損をしない仕組み」
このような言葉には、騙されたくないものです。
情報商材詐欺
情報商材詐欺は「誰でも簡単に稼げる方法」などと謳い、高額な情報商材を販売する詐欺です。インターネット上で、動画やメルマガなどを通じ、マニュアルやソフトウェア・高額セミナーなどを売りつけられます。
情報商材詐欺の被害事例では、数万円から数百万円の高額な情報商材を購入させられるケースが多くみられます。しかし、購入した情報商材の内容は、インターネット上で無料で入手できる情報の寄せ集めであったり、実践が難しかったり、稼げる保証がなかったりと、期待はずれであることが大半です。
相談事例
- 副業で儲けるための情報商材を購入後、サポート契約もしたが、説明された内容と違うので解約したい。クーリング・オフできないか。
- ミニブログで知り合った人からカフェに呼び出され、ビジネス商材とFX取引のオンラインサロンの契約をした。クーリング・オフの手続きを知りたい。
- 副業ランキングサイトを見て高額なサポート契約等を申し込んだが、返金を申し出ると合意書を送ると言われた。送付を承諾してもよいか。
- 副業ランキングサイトを見て、スマートフォンで簡単に稼げるマニュアルを申し込んだが、怪しいと思うのでこのまま無償でキャンセルしたい。
- 副業を探していたところ、物販ビジネスを見つけ、オンライン会議で説明を聞いて高額なオンライン講座を契約したが、クーリング・オフしたい。
引用:国民生活センター
こんな誘いに要注意!投資詐欺の見分け方
投資詐欺の被害に遭わないためには、詐欺的な投資勧誘の特徴を理解し、適切に対処することが重要です。投資詐欺の勧誘は、巧妙で多様な手口を用いますが、共通する特徴があります。ここでは、投資詐欺の勧誘によく見られる「メリットばかりを強調する」「将来の不安を煽る」「先生やメンターの存在」という3つの特徴について解説します。これらの特徴を知ることで、投資詐欺の危険性を早期に察知し、被害を未然に防ぐことができるでしょう。
メリットばかりを強調して話してくる
投資詐欺の勧誘では、投資のメリットばかりが強調され、リスクやデメリットには触れられないことが多いのが特徴です。「確実に儲かる」「リスクゼロ」といった言葉で、投資の安全性を過度にアピールします。
また、非現実的な利回りや配当が提示されることもあります。「月利10%」「年利100%」といった、通常の投資では考えられない高利回りを謳う投資話は要注意です。「誰でも簡単に稼げる」「初心者でも大丈夫」といった言葉も、投資詐欺でよく使われます。投資で稼ぐためには、一定の知識とスキルが必要不可欠です。簡単に儲かると謳う投資話は、詐欺の可能性が高いと考えられます。
さらに、投資の実態や仕組みについて、詳しい説明がないことも問題です。投資の対象や運用方法、リスク管理体制などについて、明確な情報開示がない投資勧誘は信用できません。
将来の不安を煽ってくる
投資詐欺の勧誘では、将来の不安を煽り、投資の必要性を訴えるパターンがよく見られます。特に、老後の資金不足や貧困への不安を強調し、投資による資産形成の重要性を説く手口は注意が必要です。
「今すぐ投資しないと大損する」「絶対に儲かるチャンスを逃すな」といった煽り文句で、投資を急かすことも投資詐欺の特徴です。時間的プレッシャーをかけることで、冷静な判断力を失わせ、投資を決断させようとします。
また、投資を将来の不安を解消する特効薬のように説く勧誘にも注意が必要です。「この投資さえしておけば、老後は安心」といった言葉で、投資による財政的自由を保証するような話は信用できません。
投資詐欺の勧誘では、不安をあおるような感情的な言葉が多用されます。「今の生活で満足ですか?」「このままでは老後が心配では?」といった問いかけで、不安感を煽ります。感情に訴える勧誘には、冷静に対処することが大切です。
先生やメンターのような存在がいる
投資詐欺では、カリスマ性を持つ先生やメンターの存在が強調されることがあります。「〇〇先生の投資メソッド」「〇〇氏に師事すれば成功できる」といった言葉で、権威性を示し、信頼を得ようとします。
しかし、こうした先生やメンターへの過度な信頼や依存は危険です。投資の成否は、自己責任が原則です。他人の判断に頼るのではなく、自身で投資対象を理解し、リスクを管理する必要があります。
先生やメンターの経歴や実績について、詳しく検証することも重要です。本当に投資で成功している人物なのか、その手法は信頼に足るものなのかを確認することが求められます。
師と称される人物の言葉を鵜呑みにせず、批判的に吟味する姿勢を持ちましょう。投資に王道なし、と言われるように、誰かの言葉を鵜呑みにするのではなく、自身で情報を集め、判断することが投資詐欺への防衛になるのです。
騙された?と思ったら、すぐに相談しましょう
投資詐欺の被害に遭ってしまった、あるいは遭った可能性があると感じたら、一人で悩まずに、すぐに相談することが重要です。早期の相談は、被害の拡大を防ぎ、損失を最小限に抑えるために不可欠です。ここでは、投資詐欺の被害に遭った際に相談できる主な機関として、消費者センターや国民生活センター、警察、弁護士、調査会社を取り上げます。それぞれの機関の特徴や相談方法、メリットとデメリットを理解し、状況に応じて適切な相談先を選ぶことが大切です。
消費者センターや国民生活センター
消費者センターや国民生活センターは、消費者トラブルの相談窓口として、投資詐欺の被害に関する相談にも対応しています。これらの機関では、被害の状況を聞き取り、適切な助言やアドバイスを提供してくれます。消費者センターは各自治体に設置されており、国民生活センターは全国的な組織です。相談は原則無料で、電話や面談、メールなどの方法で受け付けています。
消費者センターや国民生活センターの利用メリットは、気軽に相談できる点です。しかし、法的な対応や被害回復の実務は行っていないため、詐欺の証拠収集や返金交渉などは、弁護士や調査会社など他の専門機関に依頼する必要があります。
警察
投資詐欺は犯罪行為であるため、警察への相談は重要な選択肢の一つです。警察では、被害の届け出を受理し、犯罪捜査を行います。警察への相談は、最寄りの警察署の生活安全課や刑事課、あるいは警察本部の生活経済課などが窓口となります。相談の際は、詐欺の手口や被害状況、関係書類などを準備しておくと良いでしょう。
注意したいのは、警察の役割です。警察が行うのは犯罪の捜査と検挙であり、投資詐欺の場合、犯人の特定や逮捕、被害金の押収などの対応を行います。一方で、被害金の返還については、必ずしも保証されるわけではありません。第一に、被害の状況が、犯罪の構成要件と呼ばれる「逮捕・起訴の根拠となる要素」を満たすとは限りません。第二に、被害回復給付金支給制度などはあるものの、被害金の返還などは民事扱いであり、刑事事件を取り扱う警察は介入できない問題があります。
弁護士
投資詐欺の被害に遭った場合、弁護士に相談することも重要です。弁護士は、法的な観点から適切なアドバイスを提供し、被害回復のための交渉や訴訟を行います。相談したいときは、直接弁護士事務所に連絡するか、弁護士会の紹介サービスを利用する方法があります。初回相談は無料の場合が多いですが、正式に依頼する際は弁護士費用が発生します。
弁護士は警察と異なり、個人や法人の相談を受けて、民事・刑事の両面で法律トラブルの解決にあたってくれる立場です。あくまでも被害回復を目標として活動し、相手方さえ分かっていれば、訴訟や差押えなどといった対応が取れるでしょう。
もっとも、弁護士に依頼したとしても「相手方が分かっている」という条件がハードルになります。被害の多くは、犯人が巧妙に身元を隠しており、正しい氏名・住所が分かりません。このとき、弁護士の職権で公的記録の閲覧して調査できますが、相手方で調査を折り込み済みであれば、特定に至る期待はそれほどありません。
調査会社
投資詐欺の被害に遭った場合、調査会社に依頼するのも有効な選択肢です。調査会社は、詐欺の実態解明や証拠収集、被害回復のための交渉などを行います。依頼する際は、まず調査内容と費用の見積もりを確認します。調査費用は、調査内容や期間によって異なりますが、一定の費用負担が必要になるでしょう。
調査会社の強みは、投資詐欺に特化した調査ノウハウやネットワークを持っている点です。詐欺グループの特定や資産の追跡、海外の関係者の調査など、専門性の高い調査を行うことができます。さらに、民事事件の対応にあたる弁護士とも連携をとっており、請求手続きや海外資産の差押えといった、直接解決につながる対応まで依頼可能です。調査会社の活動で相手方が特定できていれば、刑事事件として立件し、罰してもらう期待も生まれます。
相手の居場所を突き止め、お金を取り戻せる確率を挙げるなら、調査会社への依頼はうってつけだと言えます。
詐欺かな?と思ったら調査会社に相談を
投資詐欺による被害拡大を防ぐ唯一の方法は、詐欺であることにいち早く気付くことです。多くの被害者は、もしかしたら詐欺かもしれないと思いながらも、お金を次々と犯人に支払ってしまいます。これも犯行の手口のひとつによるもので、投資詐欺を行う者は、被害者を信用させる方法に長けているのです。
詐欺被害の疑いがあるときは、無料で相談できる消費者センターや国民生活センターに問い合わせてみるのもひとつの手です。しかし、実際に詐欺だと分かっても、相手の身元特定や被害回復に向けて動いてくれるわけではありません。万一のときに迅速な対応がとれるよう、最初から調査会社に相談するのがベターです。