投資詐欺の手口と解決策

有名人を騙る投資詐欺の実態。被害に遭ったときの対処法と相談先

芸能人やスポーツ選手、著名な経済人など、世間の注目を集める有名人の名前や画像を悪用し、「こんな簡単な投資で高収益が得られる」と甘い話を持ちかけてくる犯行グループの存在が、近年大きな問題となっています。とくに、SNSの普及や生成AIの発展に伴い、犯行グループは有名人に成りすますのが容易になり、より多くの潜在的な被害者にアプローチできるようになっています。巧妙に作り込まれた偽物のプロフィールは、本物と見分けがつきにくく、被害は拡大する一方です。

では、有名人を騙る投資詐欺の手口とはどのようなものなのでしょうか。また、万が一被害に遭ってしまった場合、どのような対処をすべきなのでしょうか。

有名人を騙るSNS型投資詐欺の被害続出

近年、SNSを利用した投資詐欺が急増しており、特に有名人の名前や画像を悪用したケースが目立っています。2023年に入ってからも、芸能人のA氏やスポーツ選手のB氏などを装った偽アカウントが多数確認されており、これらのアカウントを通じて投資話を持ちかけるという手口が横行しています。

被害者の中には「有名人からのダイレクトメッセージに舞い上がってしまい、高収益を期待して安易に投資してしまった」という人や、あるいは「長年応援していた芸能人からの投資話だったので、信用してしまった」という人もいます。投資に失敗し、多額の損失を抱えた被害者の中には、精神的に大きなダメージを受けている方も少なくありません。

有名人を騙る投資詐欺は、X(旧Twitter)やFacebookなどのSNSを入口とすることが多い点から、警察では「SNS型投資詐欺」として警戒を強めています。令和5年度のSNS型投資詐欺は、認知されている件数で2,271件、被害額は約277.9億円にも及んでいます。1人あたりの被害額に換算すると約1,000万円にも及ぶことから、深刻かつ高度な手口によるものであると分かります。

参考:SNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況について│警察庁

有名人を利用した投資詐欺の手口

有名人を利用した投資詐欺では、巧妙な手口が用いられています。まず、SNS上で有名人の写真や名前を使った広告を表示し、被害者の関心を引きつけます。広告をクリックすると、有名人になりすました偽物のプロフィールページに誘導されます。

偽アカウントでは、有名人の写真や経歴を掲載し、本物そっくりに作り込まれています。近年注目されているAIを悪用し、本物と見分けがつかないほど精巧な動画や音声を使う手口まで出現しているのは、とても見逃せません。

さらに、偽物からこまめに返信したり、定期的に投稿を行ったりすることで、アカウントの信憑性を高メる手口も見受けられます。そのうち、潜在的な被害者に対して「新しい投資案件で高収益が期待できる」「限られた人にだけ特別に紹介する」などと、興味を引く文面で投資を持ちかけてきます。

参考:有名人かたり…SNS型投資詐欺急増 30代‐40代も注意 “怪しい”と思ったが1900万円失った人も│NHK

投資詐欺に遭った場合の対処法

投資詐欺の被害に遭ってしまった場合、まずは冷静に状況を把握し、適切な対処法を講じることが重要です。詐欺師との通信記録や証拠書類を保全し、警察や消費者センターに相談することで、被害の回復や拡大防止に繋がります。ここでは、投資詐欺に遭った際の具体的な対処方法について解説します。

詐欺師の情報・被害の証拠を収集

投資詐欺の被害に遭った場合、まずは詐欺師との通信記録や証拠書類を保全することが重要です。スマートフォンやPCで詐欺師とやり取りしていた場合は、画面をスクリーンショットで記録しましょう。スクリーンショットは、日時や相手の情報が分かるように、メッセージアプリの画面全体を撮影します。録画の場合は、画面の遷移や音声なども記録できるため、より詳細な証拠を残すことができます。

また、詐欺師に送金した記録や、投資に関する契約書などの書類も重要な証拠となります。送金記録は、銀行やクレジットカード会社の明細書を印刷または画面を保存しておきましょう。契約書や投資説明資料などは、原本をスキャンしてデータ化し、クラウドストレージなどに保存するのが望ましいです。

これらの証拠は、警察への被害届け出の際に必要となります。被害届には、詐欺師の連絡先や送金先の口座情報、やり取りの経緯などを詳細に記載する必要があるため、証拠を整理し、時系列に沿ってまとめておくと効率的です。

投資詐欺に使われた広告内容を保存

投資詐欺に遭った場合、詐欺師との直接のやり取り以外にも、詐欺に利用された広告の内容を記録しておくことが重要です。SNSやウェブサイト上の広告は、一定期間が経過すると表示されなくなることがあるため、早めに記録を残しておきましょう。

手順としては、広告が表示されているウェブページを、スクリーンショットや画面録画で記録します。広告の文言や画像、リンク先のURLなどを漏れなく記録するために、ページ全体をスクロールしながら撮影しましょう。

さらに、広告の内容を詳細にメモしておくことも重要です。広告の見出しや本文、画像の内容、リンク先のページの内容などを、具体的に記述します。特に、投資の利回りや安全性をアピールしている文言、有名人の名前や写真を使用している箇所は、詐欺の証拠として重要になります。

投資詐欺に遭った場合の相談先

投資詐欺の被害に遭った場合、一人で抱え込まずに適切な相談先に助言を求めることが重要です。被害の回復や拡大防止のために、クーリング・オフ制度の利用、消費者センターや警察への相談、弁護士や調査会社への依頼など、状況に応じて最適な選択肢を検討しましょう。ここでは、投資詐欺の被害に遭った際の主な相談先とその特徴について解説します。

クーリング・オフ制度を利用する

クーリング・オフ制度は、一定の方法で契約の申し込みや締結を行った場合に、一定期間内であれば無条件で契約を解除できる制度です。投資詐欺の場合、クーリングオフが適用されるケースは限定的ですが、詐欺師が自宅に来た際に契約させられたり、電話で強引に勧誘されて契約したりした場合は、クーリングオフの対象となる可能性があります。

▼クーリング・オフの対象となる取引

取引名称概要クーリング・オフできる期間
訪問販売キャッチセールスなど8日間
電話勧誘販売電話によるセールスなど8日間
特定継続的役務提供エステ・美容・教育・結婚相手紹介など8日間
訪問購入訪問販売での購入8日間
連鎖販売取引いわゆるマルチ商法20日間
業務提供誘引販売取引内職やモニター募集を装った取引20日間

参考:クーリング・オフ│国民生活センター

クーリングオフを行う際は、契約書面を受け取った日から起算して所定の期日以内に、書面で事業者に通知する必要があります。通知書には、契約の解除を求める旨、商品名、契約日、申込者の氏名や住所などを記載し、簡易書留等で送付します。

期間内に適切な通知を行えば、契約は無効となり、支払った代金の返還を求めることができます。ただし、期間を過ぎてしまうと、契約解除の権利は失われてしまうため、被害に気づいたらできるだけ早く行動することが重要です。

消費者センターに相談する

消費者センターは、消費者トラブルの相談や解決のサポートを行う公的機関です。投資詐欺の被害に遭った場合、最寄りの消費者センターに相談することで、必要に応じて助言してくれます。クーリングオフ制度の利用方法や、犯人との話し合い方を分かりやすく教えてもらいたいときは、適切な相談先と言えるでしょう。

参考:全国の消費者センター等│国民生活センター

一方で、消費者センターで相談しても、解決に直接結びつくとは言えません。相談員がやってくれるのは、自分で対応するときのアドバイスや、警察・弁護士への相談要否の判断だけです。実際に摘発や被害回復に向けて動いてくれるわけではありません。それどころか、消費者センターに連絡しているあいだに、対応が遅れ、被害金を取り戻しづらくなることも考えられます。

警察に相談する

有名人を騙る詐欺は、多くの場合、犯罪に当てはまります。そこで、警察に相談すれば、詐欺師の逮捕や被害回復に繋がる可能性があります。警察に相談するメリットは、犯罪者の特定や逮捕のあと、被害金の回収などが期待できることです。相手が刑事裁判で訴追された場合は、損害賠償命令制度や被害回復給付金支給制度により、お金を取り戻せる可能性があるのです。

一方で、捜査にあたって時間がかかり、被害が小さい・犯罪の構成要件を満たさないことなどを理由に捜査に力を入れてもらえないケースがあることは、到底見逃せません。とくに、詐欺師が海外に逃亡している場合や、証拠が不十分な場合は、捜査が長期化したり、被害金の回収が困難になったりする可能性があります。

弁護士に相談する

投資詐欺の被害回復を法的に進めるために、弁護士に相談するのは良い方法です。弁護士なら、刑事・民事の両面で法的な対応を任せられ、示談交渉や裁判手続きを有利に進められるようになります。とくに民事面は強く、強制執行や差押えを通じて被害金を取り戻せる期待は大きいと言えます。

一方で、弁護士費用がかかることや、それに見合う効果は実際のところないケースがほとんどなのは、見逃せないポイントです。弁護士が活動できるのは、その公的資料を閲覧できる権利で相手方を特定できる場合です。有名人を騙る詐欺は、海外に拠点があったり、外国人のグループだったりすることが多く、その身元は巧妙に隠されており、弁護士の権利だけで特定できる保証はありません。

調査会社に相談する

有名人を騙る詐欺は非常に高度な手段が用いられており、警察や弁護士であっても対応しきれるとは言えません。そこで選択肢に入るのが、調査会社への相談です。調査会社では、詐欺師の特定や資産の追跡、証拠収集などに専門性を持っており、警察や弁護士とは異なるアプローチで被害回復をサポートします。

調査会社の強みは、調査員の高い情報収集能力と、詐欺事件に特化した調査ノウハウにあります。インターネット上の情報や、詐欺師が利用した金融機関の情報などを詳細に分析し、詐欺師の特定や資産の所在を突き止めることができます。

また、調査会社は、警察や弁護士、消費者センターなど、他の機関とも連携しながら、被害回復に取り組みます。収集した証拠を警察に提供して捜査に協力したり、弁護士と連携して法的措置を進めたりすることで、より効果的な被害回復が期待できます。

調査会社への依頼は、基本的に有料となりますが、被害金額が大きい場合や、他の相談先での解決が難しい場合は、検討する価値があるでしょう。調査会社の選択は慎重に行い、実績や料金体系、調査方針などを十分に確認してから契約を結ぶことが重要です。

有名人の投資広告の詐欺に遭われた方は調査会社へ相談を

有名人を騙る投資詐欺の被害に遭われた方は、ぜひ投資詐欺被害者支援サービスをご利用ください。調査会社の強みは、投資詐欺事件に特化した調査ノウハウと、熟練した調査員による高い情報収集能力にあります。詐欺師が巧妙に身元を隠している場合でも、インターネット上の情報や金融機関の記録など、あらゆる情報を分析することで、詐欺師の特定や資産の所在を突き止めることができます。

有名人を騙る投資詐欺の手口は年々巧妙になっており、被害も拡大の一途をたどっています。しかし、適切な対処法を講じることで、被害を最小限に抑え、回復への道を切り開くことができます。

被害は、金銭的な損失だけでなく、精神的な苦痛も大きいものです。しかし、一人で抱え込まず、適切な支援を求めることで、必ず道は開けるはずです。

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