近年、仮想通貨(暗号資産)を利用した詐欺が急増しています。ポンジ・スキーム、フィッシング詐欺、市場のパンプ&ダンプ、有名人を使った偽の宣伝、不正なICOなどの手口はありますが、いずれも被害に遭ったときはしっかりと証拠を保全し、適切な相談先を選択しましょう。
仮想通貨詐欺への対応方法を含めて相談できる窓口には、ここで紹介するように、金融サービス利用者相談室や消費者センター、警察、弁護士などさまざまです。もっとも、それぞれにメリット・デメリットがあり、手口が巧妙化するほど被害者にとって心もとない存在となりがちです。では一体、どこに相談して、どう対処すればいいのでしょうか。
目次
仮想通貨詐欺が急増している理由
近年、仮想通貨(暗号資産)で「稼げる」などと称する詐欺が急増しています。国民生活センターの発表によると、2015年度の仮想通貨関連の相談件数は441件ですが、2017年には2,910件と2年間で5倍以上に膨れ上がりました。2018年には3,455件とピークに達し、その後も3,000件前後で推移しています。
引用:情報商材や暗号資産(仮想通貨)のトラブル│国民生活センター
仮想通貨詐欺が急増している理由の一つは、仮想通貨への関心の高まりです。2017年にビットコインの価格が急騰し、メディアでも大きく取り上げられました。その後も価格上昇は緩やかに続き、投機目的で運用する人を中心に「儲かる資産」としての地位を固めています。
一方で、仮想通貨に対する規制は、十分とは言えないのが現状です。悪質な投資会社や、仮想通貨取引所を名乗る業者が、詐欺的な手法で利用者を惹き付けています。さらに言えば、匿名性の高さも詐欺の温床となっており、犯罪収益の移転に利用されるケースが多く、マネーロンダリングのリスクも指摘されている点も無視できません。
仮想通貨詐欺の代表的な手口
仮想通貨詐欺には様々な手口がありますが、その多くは「必ず儲かる」などの甘い話で利用者を惹き付け、巧みに金銭をだまし取ろうとします。中でも代表的なのが、ポンジ・スキームやフィッシング詐欺、市場のパンプ&ダンプ、有名人を使った偽の宣伝、不正なICOなどです。これらの手口は常に巧妙化しており、利用者は細心の注意を払う必要があります。以下では、それぞれの手口の特徴と注意点を詳しく解説します。
ポンジ・スキーム
ポンジ・スキームは「必ず高額のリターンが得られる」と謳い、新規投資家からの資金で既存の投資家に配当を支払うことで、元本割れしているにも関わらず、配当が継続して支払われているように見せかける詐欺手法です。紹介報酬制度を設けることで会員を増やし、新規資金を集め続けないと破綻してしまうため、必ず行き詰まる運命にあります。実態のない投資話に惑わされないよう、慎重な判断が必要です。
フィッシング詐欺
フィッシング詐欺は、有名な仮想通貨取引所やウォレットを装った偽のウェブサイトやアプリを作り、利用者の個人情報を詐取する手口です。偽サイトに誘導されてIDやパスワードを入力してしまうと、あとは詐欺師が自由に仮想通貨を不正送金できてしまいます。普段から利用しているサービスでも、URLやセキュリティ証明書をよく確認し、少しでも不審に感じたら立ち入らないことが大切です。
市場のパンプ&ダンプ
市場のパンプ&ダンプは、特定の仮想通貨の価格をインサイダー情報に基づいて不自然に吊り上げ、高値で売り抜ける手口のことを指します。SNSやチャットルームなどを使って人為的に価格をつり上げ、群集心理を巧みに利用します。「必ず上がる」との触れ込みに惑わされず、自身で冷静に判断することが重要です。
有名人を使った偽の宣伝
有名人の名前や画像を無断で使い、いかにもその有名人が仮想通貨投資を推奨しているかのような偽の宣伝を行う詐欺です。SNSや記事広告などを通じて拡散され、信頼性が高く見えるため注意が必要です。有名人をかたるなりすましアカウントからの投資への勧誘は詐欺である可能性が非常に高いでしょう。
不正なICO
不正なICO(イニシャル・コイン・オファリング)は、魅力的な事業計画を掲げるものの、実態のないプロジェクトに投資を募る詐欺です。ホワイトペーパーを巧妙に偽造し、専門的な用語を並べて信頼性を高めます。マルチ商法のように紹介報酬目当ての投資家がさらなる投資家を勧誘することもあります。集めた資金は持ち逃げされ、被害を回収することは困難を極めます。有名企業が名を連ねる確実なICOでない限り、参加は控えるべきでしょう。
仮想通貨詐欺の返金請求の際に必要なもの
仮想通貨詐欺の被害に遭った場合、返金請求のために必要な情報やデータを揃えておくことが重要です。警察や弁護士、調査会社などに相談する際に、これらの証拠を提示することで、詐欺の実態を正確に伝え、被害回復の可能性を高めることができます。
取引記録を保存する
まず、取引記録は返金請求の根拠となる重要な証拠です。仮想通貨の取引では、送金元と送金先のアドレス、送金額、手数料、タイムスタンプなどが記録されます。これらの情報は、ブロックチェーン上に永久に刻まれ、改ざんが極めて困難であるため、証拠能力が高いと言えます。被害に遭った取引所やウォレットサービスに問い合わせて、取引履歴を出力し、安全に保管しておきましょう。また、送金先のアドレスも控えておくと、資金の流れを追跡する際に役立ちます。
被害届の控えを大切に保管
警察に被害届を提出した場合は、その控えを必ず保管しておきましょう。被害届には、詐欺の手口や被害に遭った日時、被害額など、返金請求の根拠となる情報が記載されています。また、被害届の受理番号は、その後の捜査や問い合わせの際に必要となる大切な情報です。弁護士に相談する際にも、被害届の控えがあると、スムーズに話を進めることができるでしょう。
詐欺師とのやり取りを記録する
詐欺師とのやり取りの記録も、重要な証拠となります。騙されて送金した経緯を立証するため、メールやチャット、SNSでのやり取り、電話の録音などを保全しておくことが大切です。特に、「必ず儲かる」などの甘い言葉や、複雑な取引を持ちかけてくる巧妙な手口は、詐欺の証拠として有力です。やり取りの日時や内容をスクリーンショットで保存し、証拠として提出できるよう準備しておきましょう。
関連する広告や勧誘情報も記録
最後に、詐欺に関連する広告や勧誘のメール、アプリ、ウェブサイトのURLなども記録しておくと良いでしょう。これらの情報から、詐欺グループの活動実態や規模、関連性などが浮かび上がることがあります。海外送金の場合は、送金経路に関する情報も極めて重要な手掛かりとなります。
以上の情報やデータを時系列に整理して、弁護士や調査会社に提供することで、詐欺の全体像を把握しやすくなります。一方で、証拠が不十分だと、被害の立証が難しくなり、返金請求が困難になってしまう恐れがあります。泣き寝入りを避けるためにも、できる限り多くの証拠を集め、適切に管理しておくことが肝要です。
仮想通貨詐欺に遭った時の相談先
仮想通貨詐欺の被害に遭ってしまった場合、どこに相談すればよいのでしょうか。泣き寝入りせずに、適切な機関に相談することが重要です。金融サービス利用者相談室や消費者センター、警察、弁護士、調査会社など、様々な選択肢がありますが、それぞれの特徴を理解して、自身の状況に合わせて適切な相談先を選びましょう。以下では、各機関の役割と相談のポイント、メリットとデメリットを解説します。
金融サービス利用者相談室
金融庁が運営する金融サービス利用者相談室では、仮想通貨に関する被害の相談を受け付けています。取引所や業者に関する苦情や問い合わせにも対応してくれます。
金融サービス利用者相談室は、仮想通貨詐欺被害の相談先として最初に検討すべき選択肢の一つです。専門的な知識を持つスタッフが親身に対応してくれるため、安心して相談できます。ただし強制力がないため、業者の対応次第では解決までに時間を要する点には注意が必要です。
消費者センター・国民生活センター
消費者センターや国民生活センターでは、消費生活全般の相談を幅広く受け付けています。仮想通貨詐欺の被害も消費者トラブルの一つとして、適切な助言やサポートを受けられます。
消費者センターや国民生活センターは、消費者保護の観点から、被害の防止と回復に向けた手厚い支援が期待できます。特に、関係機関との連携により、効果的な解決策を提示してくれるでしょう。ただし仮想通貨に特化した専門知識は乏しい場合があるため、より専門的な相談が必要なケースでは、他の選択肢も検討すべきです。
警察
詐欺被害の金額が大きい場合や、多くの被害者がいる場合は、警察に相談するのもひとつの方法です。被害届を提出し、捜査を要請することで、犯人の特定や逮捕につながる可能性があります。
警察への相談は、犯人の特定や逮捕を目的とする場合に効果的です。警察はあくまでも刑事事件の対応にあたる機関であり、民事事件として解決すべき領域には踏み込んでくれません。被害者としてもっとも気になる被害金の回復は、民事事件として対応すべきものであり、警察とは別に自分で対応する必要があるのです。
また、警察による捜査そのほかの対応も、十分に尽くされ、功を奏するものとは限りません。警察が対応する事件には優先順位があり、被害の程度や、ほかの被害者からの告訴・告発件数によっては、後回しになってしまう可能性があります。
上記のように、一見すると相談先としてもっともふさわしい警察でも、被害者の痛切な想いに沿ってくれるとは限らない点に要注意です。
弁護士
法的な観点から適切なアドバイスを得たり、被害回復を目指したりする場合は、弁護士に相談するのが最も適切とされるのが一般的です。示談交渉や民事訴訟の提起など、法的手段を駆使して被害の回復を目指すことができます。
仮想通貨の詐欺に対する弁護士の役割は、加害者が知れている状態を前提とする、損害賠償や不当利得返還の請求による被害回復です。ここで問題なのが、仮想通貨そのほかの手段を用いた詐欺全般において、詐欺を働いた者の特定はできていない(そもそも特定できないようにされている)点です。
弁護士は職権で住所開示などができる立場ですが、公的資料での調査は限界があります。加えて仮想通貨詐欺では、犯人が海外にいることが多く、その居場所自体も、IT技術によって巧妙に隠している場合がほとんどです。こうした相手に対する、ネットワークの知識や地道な捜索を用いた調査といった活動までは、弁護士には期待できません。
上記のように、民事事件で頼りになるとされる弁護士でも、仮想通貨詐欺のような高度な事件に対しては、犯人が分かるまでほとんど力になれません。
調査会社
仮想通貨詐欺は国境を越えて行われることが多く、海外の取引所に送金されたケースでは、独力での追跡は困難を極めます。そこで頼りになるのが、国際的なネットワークを持つ調査会社の存在です。
調査会社は、他の機関では対応が難しい国際的な仮想通貨詐欺事件の解決に大きな力を発揮します。ブロックチェーン解析などの最新技術を駆使し、匿名の詐欺グループや海外送金先を特定できるのです。また、国際的な法的措置や、資産の差し押さえといった、被害回復に向けた活動もできます。
仮想通貨詐欺対策のエキスパートとして、専門性の高さは他の追随を許しません。調査費用がかかる点はデメリットですが、高度な調査力と国際的なネットワークを活用できるのは大きなメリットと言えるでしょう。
特に、海外送金先の特定や国際的な法的措置が必要なケースでは、調査会社への相談が最も有効な選択肢となります。詐欺グループの徹底的な追跡と、被害金の回収に全力を尽くしてくれるはずです。
仮想通貨詐欺は調査会社にご相談を
仮想通貨詐欺の多くは国境を越えて行われ、海外の取引所に送金されるケースが大半を占めます。そのような複雑な事案では、国内の機関だけでは対応が難しく、被害回復までの道のりは長く困難なものとなるでしょう。相談先として、金融サービス利用者相談室や消費者センター、警察、弁護士などがあるものの、犯人の特定や具体的な被害回復に繋がる活動は期待できません。
調査会社は、高度な調査技術と国際的なネットワークを活用し、詐欺グループを徹底的に追跡して、被害金の回収に全力を尽くしています。ITに関する知識を駆使した粘り強い操作を通じ、被害回復に向けた対応を個別に検討しています。
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